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★拘禁刑への移行　社会も更生を支えねば

2025年6月3日 05時05分 (6月3日 05時05分更新)

　懲役と禁錮刑を廃止し、拘禁刑に一本化する改正刑法が1日から施行された。刑務所での作業は義務ではなくなり、
刑罰は「懲らしめ」から「立ち直り」に重点を移す。受刑者に応じた教育や訓練の充実が期待されるが、
社会全体が意識を変えて元受刑者の更生を支えなければ社会復帰は難しい。
　2023年に刑務所に入った受刑者は約1万4千人。再入所率は55％で、5回以上の入所者も2割に上る。
知的障害などのある人も2割を占め、高齢化も顕著だ。
　懲罰だけでは再犯を防げないという現実を直視し、個々の受刑者が抱える問題の改善に支援の軸足を移すことが法改正の狙いだ。
　具体的には、受刑者の特性に応じて24種類の処遇課程を設け、薬物依存者らには離脱プログラム、
若者には基礎学力や職業訓練、高齢者には身体や認知機能を維持するための療法などを施す。
同様の取り組みはあったが、義務である刑務作業が制約になっていた。
　これまでも拘禁刑への移行に向けた準備を進めてきた。
　社会復帰に必要なコミュニケーション能力を養うため、受刑者を「さん」付けで呼ぶ変更が一例。
一般社会との壁を取り除くため所内での隠語も廃止された。
知的障害のある受刑者らについては民間福祉団体との連携や心理学など外部専門家との協力も図ってきた。
　ただ、課題も少なくない。
　受刑者の総数は減少しているものの、教育や指導が多様化し、高齢者や障害者など配慮が必要な
受刑者の増加により職員の負担は増している。人員の拡充も検討されるべきだ。
　刑務所の保守的な組織風土で、専門家ら民間協力者の提言が生かされにくいという側面も指摘される。
秩序の維持から更生の重視に向けた職員の意識改革と、組織の柔軟性を増すことが必要だ。
　何より、元受刑者の社会復帰には迎える側の協力が不可欠だ。
　再入所者の約7割が犯行時に無職で、生活苦から再犯に走っている。就労支援策は存在するが、
社会復帰を支える「協力雇用主」のうち、実際に雇用している例は数％にすぎないとの統計もある。
　ハローワークとの連携はもちろん、一定の刑を受けると資格を失う制限の緩和も検討すべきだ。
　再犯防止には人間の立ち直りを信じる社会の寛容な目が欠かせない。あらためて確認したい。

中日新聞　http://www.chunichi.co.jp