ずんだもん Lab - ニュース速報α -

http://www.kyoto-np.co.jp

大阪・関西万博との相乗効果を生かし、
国内有数の研究機関が集積する「まち」の存在感を高めたい。

京都府南部を中心に、大阪府と奈良県にまたがる関西文化学術研究都市を
会場とする「けいはんな万博」が先月、始まった。大阪・夢洲（ゆめしま）での万博と同じ
１０月１３日までの期間、自治体と研究機関、企業、大学などが約６０のイベントを展開する。

催しは今月から本格化する。遠隔操作で動くロボットがパレードや障害物競走を
繰り広げる「アバターチャレンジ」をはじめ、食やエネルギー分野の
最新技術を通して社会課題の解決を探る企画も予定されている。


１９９４年の「まちびらき」から３０年以上が経過した学研都市の歩みの中で、
半年にわたり地域が一体的に研究成果を披露する場は初めてとなる。

４月には夢洲でけいはんな万博のＰＲイベントを開いたが、知名度向上に
いっそうの創意工夫が欠かせない。学研都市は３府県の８市町に
１２のクラスター（地区）があり、研究機関や住宅地が共存する。

大手企業や国機関の撤退、閉館が続いた時期もあったが、高速道路が整うにつれ、
立地施設数は１５０超になり、用地不足も指摘されるようになった。

一方で、当初から構想にある鉄道の「京阪奈新線」は奈良市内の駅以東で
整備が進まないなど、地区をつなぐ公共交通網の弱さは長年、
解消されないままだ。昨年には域内の人口が減少に転じている。


転換期ともいえる学研都市の将来像を考える上で、万博は重要な節目といえよう。
けいはんな万博の運営協議会で共同代表を務める京都商工会議所の堀場厚会頭は
「都市は構想から５０年がたち、求心力が少し弱くなっている。知名度を強めたい」との認識を示す。

イベントは、そのきっかけである。関係する自治体や企業、立地施設が組織の垣根を越え、
住民を交えて地域の課題をとらえ直し、都市の未来を探る契機にすべきだ。

夢洲では、学研の中核施設の一つである国際電気通信基礎技術研究所（ＡＴＲ）も
参加する実証実験で、ロボットなどのアバター（分身）がパビリオンの案内役を担う。
地球環境産業技術研究機構（ＲＩＴＥ）などは大気中の二酸化炭素を分離吸収するプラントを設置した。

「二つの万博」で披露される最先端技術が未来の暮らしに
どう生かされるのか。分かりやすく発信してもらいたい。


国は、大阪・関西万博の成果を実用化する「ポスト万博シティ」として、学研都市を位置付けている。
関西の経済界を中心に「民」主導で形成された原点に立ち、国に頼り切るのでなく、
地域で主体的に取り組んで「一歩先をゆく暮らしやすいまち」につなげてほしい。

(次へ続く)