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★「改憲派が最大の護憲派」　緊急事態下の国会議員任期巡り、議論混迷

　衆参の憲法審査会では、大震災など緊急事態発生時における国会議員の任期延長などの議論を継続している。
ただし、自民党などの「改憲勢力」が衆院で3分の2を失った上に、衆院の審査会会長に立憲民主党の枝野幸男氏が就いたため、
自民が想定するような国会発議は見通せない。

　今国会で衆院憲法審は、緊急事態における国会議員の任期延長で2回▽国民投票法関連で2回
▽臨時国会の召集期限で1回――の計5回開催された。5月8日は首相の解散権について議論する。

　初開催の3月13日は、国会議員の任期延長がテーマに設定された。
第2次安倍晋三政権下で自民がまとめた改憲4項目の一つで、改憲勢力の間では、
論点整理が進んでいるため最も実現可能性があるとされる案だ。
昨年の通常国会では、自民、公明、日本維新の会など4党1会派が条文化の作業に入るよう求めていた。

　だが、枝野氏は「最大公約数を見つけるため、因数分解して共通項を探る」として議事を整理。
緊急事態における国会機能維持について、
?議員任期延長?オンライン国会?臨時国会の召集期限?首相の解散権制限――にテーマを分類した。
このうち、まずは?について、自然災害などの発生で選挙の実施が困難になる
「選挙困難事態」は起こりうるのかを巡って各党が意見を交わした。

　立憲の山花郁夫氏は、東日本大震災と同規模の地震が、衆院選投開票日の約1カ月半前に発生した場合でも、
全国で8割強の議員が選出できるとの試算に触れ、任期延長すれば「8割強の有権者の選挙権を行使しうる
機会を制限する」などと反対した。立憲が反対を明確にする状況では発議に至らない。

　4月は憲法改正の国民投票を巡り、3日にテレビやインターネットのCM規制、10日はフェイクニュース対策などを議論した。
その後、立憲がこだわるテーマに移った。

　24日は臨時国会の召集期限について協議。
憲法53条は衆参いずれかの4分の1以上の要求があれば、内閣は国会召集を決定しなければならないと規定する。
ただ、具体的な召集期限は明記されていない。

　立憲の松尾明弘氏は、第2次安倍政権下の2017年、野党は「森友学園問題」などの
真相解明のため臨時国会の召集を求めたが、政府が応じたのは98日後だったと指摘。
「明白な憲法違反」「何らかの立法的な手当てが必要だ」と訴えた。

　自民は野党時代の12年にまとめた憲法改正草案に「20日以内に召集」を明記している。
だが、その後の改憲4項目には含まれなかった。
自民の上川陽子氏は「（12年草案は）公式文書の一つだが固執しない」
「現時点の党の考えはまとまっていない」と述べるにとどまった。

　連休後の8日は、首相の解散権制限がテーマとなる。
天皇の国事行為に関する憲法7条に基づく解散について、
立憲は「首相の権力乱用」と批判し、制限の必要性を訴えてきた。

　これらの改憲は自民に抵抗感があるものの、立憲ベテランは「我々が賛成するテーマでしか3分の2に届かず、発議できない。
改憲派が、いまや最大の護憲派になっている」と語り、自民をけん制している。【飼手勇介】

毎日新聞 2025/5/2 19:16（最終更新 5/2 19:17） http://mainichi.jp