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★「安倍改憲」リセット　枝野氏主導の国会論議、改憲勢力はジレンマ


　昨秋の衆院選を受け、憲法改正を巡る国会の状況が一変した。
自民党など憲法改正に前向きな「改憲勢力」は、改正の国会発議に必要な3分の2を衆院で失った。
さらに衆院憲法審査会長のポストを野党に譲らざるを得ず、立憲民主党の枝野幸男氏が就任した。
第2次安倍晋三政権下で自衛隊明記など4項目をまとめた「安倍改憲」はリセットされ、
議論はどこへ向かうのか。

　今国会で初めて開催された3月13日の衆院憲法審。自民、立憲に続いて自由討議に臨んだ
日本維新の会の馬場伸幸前代表が「重い腰を上げない自民と、（憲法改正の）国民投票阻止に
いそしむ立憲の姿勢は、権力の乱用に他ならない」と、国会発議を急ぐよう訴えた。
会長席で聞いていた枝野氏は、隣に座る自民の船田元・与党筆頭幹事にささやいた。

　「じゃあ、採決しましょうか」

　船田氏は「いや、いや。私がうまくやりますので」と応じ、そのまま議事は進んだ。

●憲法改正を巡る衆院勢力図と議論の変化

　これまで自民、公明、維新、国民民主の4党を中心とする「改憲勢力」は、国会発議を数の力で押し切る構えを見せてきた。
だが、衆院選後に局面は一転した。野党第1党の立憲を巻き込まなければ3分の2（衆院は310議席）に届かず、
改憲原案の採決を強行しても否決は必至だ。状況の変化を象徴する場面だった。

　枝野、船田両氏は、憲法に関して共通の師をいただく。
国会に初めて憲法議論に関する場が設けられた2000年以降、衆院憲法審査会の前身である
同調査会の会長を長年務めた自民の中山太郎氏（23年*去）の下、旧民主、自民を
それぞれ代表する立場で協力し合ったのが、枝野氏と船田氏だった。
中山氏は与野党の幅広い合意を得ながら議論を進める運営方式で野党議員とも信頼関係を築き、
与野党の憲法族議員は「中山学校」の門下生と言われる。

　船田氏は、保守イデオロギー色の強い安倍氏と距離を置き現実派として知られる。
枝野氏の会長就任を機に、自民が与党筆頭幹事に船田氏を充てたことは、協調路線への転換と受け止められた。

　枝野氏は21年以来指名がなかった会長代理を復活させ、船田氏が就いた。
運営は、会長と会長代理、野党筆頭幹事の3者で協議する態勢とした。
テーマを絞り、5月8日までのほぼ毎週木曜日に計6回開催する日程をあらかじめ決めた。
協議を進めたい改憲勢力に対し、立憲などが「日程闘争」で抵抗してきた国会の風景は、様変わりした。

　3月から始まった憲法審の議論は日程通り進む。だが、改憲勢力はジレンマに陥っている。
与野党の幅広い合意を目指す「中山方式」に回帰したため、自民が「改憲4項目」にこだわるほど合意は遠のく。こ
れに対し、立憲は改憲にこだわりがなく、党幹部は「一致できるところだけ、変えられるなら変えればいい」と
余裕の表情を浮かべる。

　枝野氏は4月24日の審査会後、「想定の中で、議論を進めていただいている」と満足そうに記者団に話した。
これに対し、船田氏は「それぞれのテーマで議論は深まったが、結論が見いだせない。
残された会議の中でどこまでやれるか、努力は続けていきたい」と語り、
枝野氏と歩調を合わせながら微妙な温度差がうかがえた。
立憲が主導権を握るようになり、改憲勢力は従来通りのやり方では進展を見通せなくなっている。
【池田直、安部志帆子、富美月】

毎日新聞 2025/5/2 18:12（最終更新 5/2 20:12） http://mainichi.jp

▽過去スレ
【政治】 衆院憲法審で討議始まる　「前のめり」枝野会長の思惑と広がる警戒感　枝野氏と自民の船田氏は高校の同窓　ともに憲法調査会の故・中山太郎会長の門下生
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