ずんだもん Lab - ニュース速報α -

★マイナシステム利用想定、こっそり半数に修正　整備過剰、無駄遣いか

座小田英史2025年2月16日 4時00分

　マイナンバーを利用して行政手続きをオンライン上で行う「マイナシステム」の利用が進まず、
国が想定利用件数を開始時から半分以下に下方修正していたことがわかった。
運用が始まった2017年度、最大で年間約6.4億件と見込んで139億円のシステムを整備したが、
21年度からは年間約3億件とし、システム整備費は約45億円減った。

　国は下方修正を発表していない。識者は「過剰な想定で税金の無駄遣いになった恐れがある」と指摘している。

　マイナシステムでは、住民一人一人に割り当てられたマイナンバーにひもづいた個人情報を、
国の機関や自治体がオンラインでやりとりできる。
住民にとって、公的申請の際に紙の証明書が不要になるなどのメリットがあるとして、国が17年秋に本格運用を開始した。

　システムは5年程度で更新され、入れ替わる仕組みだ。スタート時のシステム整備について、
総務省が14年度に民間に発注した際の仕様書を会計検査院が確認したところ、
最大想定利用件数は年約6.4億件となっていた。
それに耐えうるサーバーなどが用意され、整備費は約139億円だった。

　21年度に運用が始まった次期システムの発注の際は、デジタル庁によると最大想定利用件数は約3億件で、
整備費は約94億円とされた。件数は19年度時点で想定したという。
仕様書は発注の際に公表されるが、その後はサイト上からもなくなり、いずれの仕様書も現在は見られない。

　マイナシステムを現在所管するデジ庁は、当初の想定利用件数について、
国や自治体へのヒアリングなどから算出したと説明してきた。
実績は低迷し、導入1年目（試験運行を含む）の17年度の利用実績は139万件。
2年目の18年度は803万件だった。
当時、日本年金機構で情報漏洩（ろうえい）問題があり、年金関連の情報連携ができず利用が低調となったとされた。

　4年目の20年度からは1億件を超えたが、6.4億件には及んでいない。
実績を踏まえ、21年度からの次期システムでは想定を引き下げたという。

　元検査院審議官の星野昌季弁護士は「マイナンバーが関係するシステムについて、
国は現実的な利用可能性を考慮することなく、莫大（ばくだい）な予算と労力を投入してきたのではないか。
現在は想定を見直しているとはいえ、多額の予算と労力が費やされたのは事実で、
将来の教訓とするためにも検証が必要ではないか」と話す。

　22年度のシステム利用は約1.9億件で、最大想定の6割だった。
デジ庁は「最大想定は安定運用の数字でもあり、目標に向けて順調に増加している」としている。
関連するシステムにはこれまでに計2100億円が投じられている。

●マイナンバーシステムとは

　政府は2015年から国内の全住民に12桁のマイナンバーを付与。
納税や年金記録、住民票といった情報をひもづけ、社会保障や税などの事務手続きに活用する制度を導入した。
マイナンバーを元に、国、自治体はオンライン上で連携。住民は転居に伴う児童手当の申請や奨学金の申請などの際、
有料の課税証明書が不要となった。行政は情報照会をスムーズにするのが目的。
システムには国と自治体で計2100億円が投じられている。

朝日新聞デジタル　http://digital.asahi.com