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★楽しい日本の「ジュクギ」と「ドナルド」　石破首相の魂はいずこへ？

編集委員・高橋純子2025年2月15日 7時00分

　NHK朝の連続テレビ小説「おむすび」の評判がよろしくない。
確かにご都合主義がすぎて見ちゃいられないなんて言いながら私、ほぼ欠かさず見ている。

　石破茂政権発足の1日前に放送スタート、もう5カ月近く費やしているのに、
主人公・米田結の人物像がしかと立ち上がってこない。
削り節くらいぺらぺらのよれよれ。吹けば飛ぶ、吸えば鼻の穴にひっつく。
なによりげんなりするのは困った時の「ギャル頼み」、
ギャルギャル言ってるうちにあら不思議、お困り事が解決するシステムとなっているのだ。

　「ギャル魂で（試験に）マジ受かってみせるけん」（結）
　「私はギャルの力で、日本を元気にする」（結の姉）

　こうなったら2人とも、自民党にスカウトされて選挙に出るという展開はどうだ。
ヤンキー先生は政界引退するそうだが、元スケバンアイドルのこども政策担当相が優しく指導してくれると思う。

　さて石破首相も、わが鼻の穴にひっついて困る。選択的夫婦別姓ひとつとっても言を左右にし、
首相として何がやりたいのか、さっぱり見えてこない。

　先の施政方針演説では、「かつて国家が主導した『強い日本』、企業が主導した『豊かな日本』、
加えてこれからは一人一人が主導する『楽しい日本』を目指していきたいと考えます」。
おやおや、憂国の士として名を響かせてきた首相が「楽しい日本」とはいかなる風の吹き回しかと、強い違和を覚えた。

　よしあしは別として、「豊か」「強い」は国の目標になり得る。客観的指標があるから。
だけど「楽しい」は無理だろ……と、ネタ元である堺屋太一氏の著書をめくったところ、
「楽しい日本」に寄せて氏が言わんとしたことは「官僚主導の打破」であり、
そこに日本維新の会アゲや大阪万博・カジノ推しが連なる。

　なるほどね。首相は維新への秋波をひそませたのかもしれぬが、
「つまみ食い」した「楽しい日本」が訴求力を持つはずはなく、むしろ物価高に苦しむ人びとの反感を買った。
下手くそがすぎる。

　「心は売っても魂は売らない」。
あらゆる仕事の要諦（ようてい）だ。
野に在って好きなことを言っていればよかった石破氏とて首相になれば、意に沿わぬことをやる、
心を売らねばならぬ時もあるだろう。
しかし、条理へのこだわりという、政治家・石破茂を成り立たせてきたものまで手放したら終わりである。
どうだろう？　首相の魂はまだ、商品棚に並べられてはいないだろうか？

　それを見極めるうえで注目したのが、8日未明に行われた初の日米首脳会談、
首相がトランプ大統領のことを「ドナルド」と呼ぶかどうか。
ヤスにロン、シンゾーにドナルド、ヨシにジョー、フミオにジョー、シンゾーにウラジーミルというのもあったな。
しかしシゲルの、とりわけ現下の世界情勢における「ドナルド」は歴代のそれとは持つ意味が違う。

　結果、「神様から選ばれた」などと鳥肌もののおべんちゃらを炸裂（さくれつ）させてはいたが、
「ドナルド」も、特段高揚した様子もなく、「お行儀の悪さ」を含めておおむね平常運転を貫いていた。
心は売っても魂は売らない、ギリギリの一線は保っていたと、私は思う。

　さあ、いよいよ新年度予算をめぐる攻防が本格化する。
「おむすび」の結はギャルギャル言ってれば人生なんとかなるが、
茂はジュクギジュクギ言っているだけでは道がひらけぬ。正念場だ。

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