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★ 郷土の偉人顕彰の神社、管理者不在で１５年間雨ざらし…「政教分離に抵触の恐れ」で町は動けず

2025/01/11 06:38

　郷土の偉人を顕彰する愛媛県の義農神社（松前町筒井）が、管理者不在のまま老朽化し、１５年以上放置されている。
社殿の外からも天井に穴が開き、床が抜けているのが確認できるほどの荒れ具合。
公共性のある建物だが、「憲法で規定する政教分離の原則に抵触する恐れがある」として、松前町が修復に着手できない状態が続く。
地域で長年親しまれてきた神社のあり方が問われている。（住田勝宏）

◆義農神社の歴史
1732年　享保の大飢饉　作兵衛*去
1777年　松山藩主が碑文を建て、「義農」の名を与える
1881年　地元の有志によって義農神社が建てられる
1884年　津波で社殿が全壊
1913年　義農会（初代）が発足
1935年　義農顕彰会（2代目義農会）発足
1948年　義農会（3代目）発足　作兵衛の墓が県指定史跡に
1957年　神社再建
1991年頃　義農作兵衛翁顕彰会発足
2007年　顕彰会解散
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　義農神社は、筒井村（現・松前町）の農民・義農作兵衛をたたえるために建てられた。
作兵衛は江戸中期の１７３２年、「享保の大 飢饉 」の際、飢えで倒れた。
翌年に植えるために残していた麦種を食べるよう周囲に勧められたが、
「身を犠牲にして幾百人の命を救うことができたら本望」と断って餓*。
村人はその後、作兵衛が残した麦種を育てて飢えを免れたと伝わる。

　松山藩主の松平定静は７７年、その精神をたたえて墓碑を建て、「義農」の名を与えた。
今も町内の小学校では、人のために自分ができることをする「義農精神」とともに、
社会科や道徳の授業で作兵衛の生き方を教えている。

※写真　管理者不在の義農神社。老朽化が進んでいる（愛媛県松前町で）
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　松前町誌などによると、最初の社殿は１８８１年（明治１４年）、地元の有志によって建てられた。
８４年（明治１７年）に津波や暴風雨で全壊したが、大正時代以降は「義農会」が組織され、顕彰事業を実施。
会員や発起人には、当時の町長や県知事、財界人らが名を連ねた。
１９５７年（昭和３２年）、３代目の義農会が現在の場所に社殿を再建。
町役場の西約７００メートルに位置し、そばには町が公園を整備した。
毎年４月、町が費用を負担して義農祭も催してきた。

　９０年代、町長や財界人らが義農会の後継組織「顕彰会」を設立。
神社の管理、運営を担ってきたという。
管理団体は宗教法人でないため神職は置かず、神社本庁にも登録されていない。
顕彰会が２００７年度に解散すると、管理者はうやむやになった。

　町によると、敷地は町のほか、複数の個人が所有しており、境界が定まっていない。
建物の登記はなく、社殿の所有者は分からないという。
社殿の扉には南京錠が取り付けられ、鍵は町が預かっているが、託された経緯は不明だ。

　地域住民からは、何度も「地震で倒壊する恐れがある。危険だから何とかしてほしい」との声が上がった。
数年前には、地元の神社に 合祀 する案も検討されたが、話がまとまらず、棚上げされたままになっている。

※写真　社殿は天井の腐敗が進み、雨漏りもしている（愛媛県松前町で）
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　２３年まで筒井区長を務めた本馬泉さんは「地元の人が大切にしてきた神社。
何とかしたいが、放置されて久しく、だんだん地元の人の神社への意識が薄れている」と懸念する。
町関係者からは「行政が顕彰事業に関わりすぎたことも、対処の仕方を難しくしている」との声が漏れる。

　所有者不明の社殿の修復、解体は、町だけの判断で行うことも困難だ。
田中浩介町長は、倒壊の恐れがある空き家を自治体が認定する「特定空き家」の制度活用も視野に入れ、
「このまま放置はできない。義農精神は大事だが、今の時代に神社が必要かどうかも含めて解決策を探りたい」と話す。
まずは住民を対象にしたアンケートを実施し、地元の意向を把握するとした。

読売新聞オンライン　http://www.yomiuri.co.jp