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★こんな所に小泉進次郎氏？　裏金議員を切れなかった自民の選挙を追う

波多野陽2024年11月3日 8時00分

　衆院選での大敗の責任を取り、小泉進次郎氏は自民党の選挙対策委員長を辞職すると表明した。
その時に語ったのは「政治とカネの問題に決着をつけられずに選挙に向かってしまった」。

　本当に決着をつけようとしていたのか。記者が疑問を持ったのは、選挙戦の最中、ある場所でその姿を目撃したからだ。
福島3区。裏金問題で処分され、非公認になった議員が立候補を断念した後、裏金問題に関与した議員が擁立された選挙区だ。

●岸田前首相は幹部ではない

　衆院選の折り返しを過ぎた10月22日、福島県喜多方市のスーパー「リオン・ドール喜多方西店」に厳重な警備が敷かれた。
駐車場で待っていた聴衆はみな、事前に金属探知機で凶器の持ち込みをチェックされていた。

　最初に、黒いワゴンから降りてきた人物が手を振った。岸田文雄前首相だ。
そして、演説会の主役、上杉謙太郎氏（49）が遅れて選挙カーでやってきた。
　上杉氏は福島3区に無所属で立候補している。自民党の衆院議員だったが、裏金問題に関与し、非公認になった。
その候補への支持を、岸田氏が熱く訴えた。

　「私が最も大切にしている同志だ」
　「この人を絶対に落としてはならない」
　演説を終えた岸田氏に上杉氏が頭を下げて、握手を交わした。
　閣僚や党幹部は非公認の候補の応援には入らない。当初、自民党はそう説明していた。
だが、岸田氏について、上杉氏の選対本部長を務める渡辺義信県議は
「岸田前首相はもちろん閣僚ではない。党四役でもないので問題ない」と説明した。

非公認で無所属での立候補ながら、さながら自民党の公認候補。その様子を取材しました。

　はためく「自民党」ののぼり。仮設の演台にも「自民党」の幕。そこでマイクを握るのは前首相。
上杉氏はどう見ても自民党の候補だった。とうとう本人も選挙戦で「自民党無所属です」と名乗っていた。
着ている白いジャンパーは党のものだ。党のシンボルマークが背中に描かれている。

　この日は、これだけではなかった。
　岸田前首相が登壇する6時間前、65キロ離れた同県白河市にある上杉氏の選挙事務所には、
一人の政治家がひっそりとやってきていた。

　自民党の選挙の顔、小泉進次郎氏だった。
　党の選挙対策委員長として、石破茂首相とともに裏金議員の非公認を決め、
「政治とカネの問題に決着をつける」と全国を遊説している、その人だ。
それが裏金問題に関与した候補の選挙事務所に現れた。
　何をしていたのか。

●泣き崩れて立候補を断念

　話は衆院選公示の3日前にさかのぼる。
　衆議院解散で地元・福島3区に戻った旧安倍派の菅家一郎氏（69）と支持者が、
同県会津若松市の宴会場で選挙対策会議を開いていた。菅家氏は裏金問題で処分を受け、党から非公認とされたばかりだった。

　菅家氏は冒頭、立候補を断念すると切り出した。非公認が盛んに報じられ、自身への注目が再燃したためだ、と説明した。
　「がんばれ」
　「戦ってくれ」
　支持者から大声があがると、感極まった菅家氏が泣き崩れて会議は何度も中断。
同席した上杉氏や矢吹貢一・県連幹事長らが菅家氏に翻意を促したが、決意は固かったという。

　直後に会見した菅家氏は、「裏金議員として有権者、支持者に厳しい判断がなされている。
熟慮を重ね、出馬を辞退する」と述べた。
一方で、「裏金議員というレッテルを張られ、不信があおられている」と述べるなど、
最後まで「裏金はレッテル」と主張したままだった。（続く）

朝日新聞デジタル　http://digital.asahi.com

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