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★日韓首脳、12回重ねた会談　評価と今後の展望は？韓国の識者に聞く

聞き手・ソウル＝太田成美2024年9月7日 9時00分

　岸田文雄首相と韓国の尹錫悦（ユンソンニョル）大統領が6日、ソウルの大統領府で会談しました。
岸田氏は近く退任しますが、2人の会談は計12回を数えます。この間の日韓関係をどう評価するのか。
今後の展望をどう見るのか。韓国の識者に聞きました。

●聖公会大の梁起豪教授

　岸田文雄首相は約30年ぶりの自民党・宏池会出身の首相で、
外相も経験しており、日韓関係でも自分のカラーを出せるものと期待していた。

　広島の「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」を尹錫悦（ユンソンニョル）大統領と
共に参拝したことは、韓国側の理解を得るための努力として認められる。
だが、歴史問題について期待したような一歩進んだ謝罪はなく、
故・安倍晋三元首相のつくったフレームの中に収まってしまった印象だ。

　東京電力福島第一原発の汚染水（処理水）の海洋放出でも、
「佐渡島（さど）の金山」の世界文化遺産登録でも、韓国側が一方的な譲歩をしただけだ。

　元徴用工問題で韓国政府が解決策を提示し、
日米韓の連携も強化されたという面では、岸田氏は日本国内で評判は悪くないだろう。
だが、韓国側からすれば韓日関係が改善したことによる、実感できる効果がない。

　8月に発表された韓国のある世論調査結果では、尹政権以降の韓日関係について、約6割が満足できないと答えた。
満足だと答えたのは約3割で、尹政権を支持する保守層だけだ。

　新しい首相に代わっても日本の基本的な姿勢は変わらないだろう。
元徴用工訴訟をめぐっても、賠償命令を受けた日本企業の資産が現金化される可能性が残る。
日韓は新首相のもとで、再び厳しい関係に陥るかもしれない。（聞き手・ソウル＝太田成美）

●峨山政策研究院の崔恩美研究委員

　尹錫悦（ユンソンニョル）大統領と岸田文雄首相の信頼関係は、韓国側が元徴用工問題の解決策を出したことから始まった。
ただ、岸田氏は韓国を刺激はしない一方、歴史問題で韓国人の感情に寄り添う一歩を踏み出すこともなかった。

　東京電力福島第一原発の（処理水の）海洋放出などの問題では、韓国内で批判が広がらないよう双方が努力した。
政府間では韓日関係をうまく管理してきたが、国民には韓国側が譲歩したのに「日本は何もしていない」と映っている。
尹氏の国民への説明努力が足りなかった。

　今回も、岸田氏が任期中の成果のアピールのために訪韓し、韓国は利用されるだけだという批判が出ている。

　「佐渡島（さど）の金山」の世界文化遺産登録をめぐっても、韓国側が満足できるほどの日本側の譲歩はなかった。

　朝鮮半島出身者の過酷な労働の記録が展示されているという現場施設を訪れたが、
ついたてに説明パネルが貼られているだけだった。日本の誠意が感じられなかった。

　例えば今後、予定される追悼行事に首相退任後の岸田氏が訪れるだけでも、寄り添う姿勢を示せるのではないか。

　来年は韓日国交正常化から60年。1998年の共同宣言以降、国際情勢は大きく変化した。
今後20年、30年の韓日関係の方向性を定めるためにも新たな宣言が必要だ。

　歴史認識については、98年の宣言の「痛切な反省と心からのおわび」を繰り返すだけでもいい。
日本側は消極的だが、新首相の下でこのタイミングを生かしてほしい。（聞き手・ソウル＝太田成美）

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