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★自民総裁選、11人が出馬意欲　漂う解放感、垣間見える内向き志向

小手川太朗2024年8月17日 20時21分

　裏金事件による派閥の解散決定後に行われる9月の自民党総裁選に、立候補の意欲を示す議員は計11人にのぼる。
実力者たちが塞いでいた瓶のふたが開き、党内に漂う解放感を象徴するようだが、従来の内向き志向は変わらず垣間見える。

　1972年に推薦人による立候補制度を導入して以降、最多の候補者は2008年と12年の5人。
今回も20人の推薦人が集まらず、出馬できない議員も出るとみられるが、過去最多を更新する可能性がある。

　11人のうち、推薦人を集めた上で、19日に一番乗りで正式に立候補表明するとみられるのが、
衆院当選4回の小林鷹之・前経済安全保障相（49）だ。

　17日には同期議員の集会に出席。記者団に「政策、国家ビジョンを議論し、
国民や党員に見て頂く機会になればいい」と、多くの候補の出馬を歓迎した。

　「ポスト岸田」の面々による推薦人確保の動きが表面化したのは、
再選に意欲的とみられた岸田文雄首相による14日の不出馬表明後だ。

　「出ると決めました」。上川陽子外相（71）は16日午後、所属する岸田派の若手に携帯電話で告げた。
現職閣僚であり、かつ岸田首相が事実上のトップを務める派閥に籍を置く立場を意識し、
踏み込んだ発言を避けてきたが、せきを切ったように複数人に出馬の意向を伝えた。
同派の林芳正官房長官（63）も首相らに意欲を伝えるとともに、派内の衆院議員に支援を求め始めた。

　首相は17日、岸田派から2人が立候補に意欲を示す現状について、同派の議員にこう言った。
「私の立場で上川氏を止めるわけにいかない。そんなことしたらおかしい。2人とも出てもらえばいいんじゃないか」

　茂木派でも2人が意欲を示す。領袖（りょうしゅう）の茂木敏充幹事長（68）の動きが先行していたが、
16日には加藤勝信元官房長官（68）がテレビ番組で「具体的に動いていきたい」と表明した。

　かつてのように派閥トップがこぞって総理総裁のイスを求める時代は終わり、
領袖は必ずしも首相をめざさなくなったが、前回2021年の総裁選では、
岸田氏が茂木、麻生両派などの支援を得て当選するなど、派閥は総裁選で一定の固まりになっていた。

　だが、裏金事件で麻生派を除く5派が解散を表明。
このうち正式に解散したのは旧森山派のみで、ほかの4派は総務省への政治団体としての
廃止の届け出をしないままだが、従来と同じように派閥単位で行動すれば批判を浴びるリスクがある。
このため、結束力は緩み、「百家争鳴」（無派閥の衆院中堅）の状況だ。

　存続を表明している麻生派からは河野太郎デジタル相（61）が立候補の意向だが、
派内には公然と小林氏を推す動きもあり、流動化が進む。

　有力者が持つ「数の力」は判然としなくなり、従来のように実力者同士の駆け引きの意味が薄れ、
派閥のくびきから解き放たれる総裁選になる兆しはあるが、変わらないものもある。

　小林氏は11日のテレビ番組で「（裏金事件の関係議員を外したままでは）現場が回らなくなる」と、
安倍派議員などの処遇改善に言及した。自身を支持する安倍派議員への配慮とみられ、
閣僚経験者は「世間と完全にずれた認識」と批判する。
世代交代を訴える小林氏にも裏金事件の土壌にあった内向き志向は色濃く残る。

　総裁選にはこのほか、それぞれ無派閥の石破茂元幹事長（67）、高市早苗経済安保相（63）が
立候補の意向を固め、小泉進次郎元環境相（43）、斎藤健経済産業相（65）、野田聖子元総務相（63）が意欲を示す。

　多数の候補による論戦で「党が生まれ変わろうとしている姿を示せる」（ベテラン）との期待もあるが、
裏金事件のけじめや事件を生んだ党の体質改善に踏み込めるかがカギになりそうだ。（小手川太朗）

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