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元水上特攻隊員の佐野博厚さん（９６）＝岐阜県多治見市若松町＝
の講演が、同市陶元町の養正公民館で行われた。

佐野さんは爆弾を積んだベニヤ板製のボートで敵船に突撃する部隊
「陸軍海上挺進（ていしん）戦隊」に所属したが、出撃がないまま終戦を迎えていた。

講演で「当時の若者は消耗品扱いだった。戦争の愚かさを世代から世代へ語り継いでほしい」と呼びかけた。

佐野さんは１９４３年に１５歳で陸軍に志願した。
当時は中学３年生だが、週５日は工場で勤労奉仕する日々だった。

「将来の夢を聞かれると『俺は兵隊になって大将になるんだ』と答える
ような教育だった。国のために戦う時がきたと思っていた」と振り返った。

広島県江田島町幸ノ浦の基地でボートの訓練を積み、熊本県天草市の部隊に配属された。
４５年８月１５日、米軍との本土決戦に備えて洞穴を掘る作業から戻った時、終戦を知った。

「われわれはこうして生きているのに、うそだと思った。
終戦が先であれば（敵船に）突入していただろうと思う」と話した。

佐野さんは「テレビや映画の特攻隊とは違い、自分に選択肢はなかった。
上官からの１枚の命令書だ。そうした教育を受けてきた」と強調した。
「特に中学、高校生に戦争の悲惨さ、命の尊さを身に染みて感じてほしい」と話した。

講演は同公民館で開かれた展示会「第３１回戦争と平和展」の一環で実施された。