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★島田雅彦さん、自民党にガツン　対米従属、保守でなく「保身」　「公益への奉仕」置き去り

　自民党派閥の裏金事件で、関与が取り沙汰された派閥の幹部議員は立件されず、根本的な派閥解消は実現しそうにない。
政治批判を重ねてきた作家、島田雅彦さん（62）は静かな口調に憤りをにじませる。
「自民党は保守ではなく『保身』。党内調整が政治だと思っている彼らを政権の座から追放すべきだ」

　島田さんが「世直し」をテーマに政府要人の暗*を描いた長編「パンとサーカス」を刊行したのは2022年3月のこと。
3カ月半後に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件を見越していたようだと話題になった。
17年出版の「カタストロフ・マニア」でも、新型コロナウイルス禍を予言したかのような感染症の流行と国家統治の崩壊を描いた。

　過去に文学者も戦争に協力した反省から発信を続け、現実社会で募る憤りをフィクションに落とし込んできた。
作品に共通するのは、利権を手放さず国民から財産や自由を搾取しているとみる政治家と官僚への批判、
政官界が支え「日本の停滞の全ての元凶」と語る「対米従属路線」への怒りである。「パンとサーカス」ではこう記している。
＜講和条約によって、独立国家としての体裁を取り戻したというのは建前に過ぎず、
日本は実質、アメリカの植民地として、半永久的に支配されることになったのだ＞

　島田さんの目に怒りの火が宿る。「米国の間接統治の受け皿として自民党は機能してきた。
そういう日本の政治方針は永久に変わらないという前提が、彼らをつけあがらせている。
米国に服従し、貢いだ見返りのように私利私欲をむさぼる構造がある。保守を掲げてはいるが、単なる保身なのです」。
野党が台頭しない一因も対米従属路線にあると言う。
「安全保障も経済も外交も、野党は米国の思惑から外れた政策を打ち出しにくく、自民党の政策との差異化がしづらい。
日本の真の独立を掲げるカリスマが登場したとしても、国民の圧倒的支持によって守られない限り短命に終わる危険がある。
日本独自の政治風土は内側から変わらず、変わる可能性があるとしたら、外圧が高まった時です。
あまり想像したくはないが、日中戦争で敗戦するといった絶望的な状況に陥らないと変わらないのではないか」

　戦後政治を振り返り、「露骨な対米従属政策を取った政権は長持ちした」と指摘する。
日米同盟の強化を念頭に、日本列島を「不沈空母」に例えた中曽根康弘政権、
イラク戦争で米国を早々に支持した小泉純一郎政権、集団的自衛権の行使を容認する安保法制を成立させた安倍政権。
「過剰なまでに防衛協力し、米国からしっかりと権力基盤を支えてもらうわけです。
日本人から搾取した税金を米国に貢ぐ、言わば『悪魔の売国』という政策をとらざるを得ない」と語気を強めた。
防衛費増額を強行する岸田文雄政権もその系譜だとみる。

　その岸田政権下で発覚した裏金事件で改めて浮き彫りになったのは、
規制される側の政治家が法律を整備することの限界だろう。
改正を重ねても、なお「ザル法」と言われる政治資金規正法だ。
「不記載で罰せられるのは議員ではなく会計責任者。ザル法のザルの目から議員が常にすり抜けられる」と冷ややかな笑みを浮かべた。

　島田さんが問題視するのは、法整備が不十分な点もさることながら、立件する議員を不記載の金額で線引きし、
責任が問われるべき派閥の幹部議員を不起訴とした検察だ。
立件された国会議員3人のうち不記載額が最少の4355万円だった谷川弥一元衆院議員は略式起訴され、
不記載・誤記載額が3526万円の二階俊博・元幹事長は立件されなかった。
「不記載罪でもっと多くの議員を立件することもできたはずです。変な線引きしやがって、という話ですよね」。
その判断には、安倍政権以降に顕著で、検察上層部の人事権を握る内閣へのそんたくがあったのではないかとみる。
（続く）

毎日新聞 2024/2/19　東京夕刊 http://mainichi.jp

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