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★テスラ、中国で乗り入れ制限拡大　米中対立の安保懸念で

2024年1月26日 15:00

中国政府との「蜜月」で高成長を続けてきた米テスラに逆風が吹き始めた。
人民解放軍が2021年に導入したテスラ車の軍事施設などへの乗り入れ制限は、
23年には市民が利用する政府関連施設などに広がった。
米中対立による安全保障上の懸念の高まりが原因とみられ、中国ブランド車への追い風にもなりそうだ。

「テスラを駐車場に止めることは禁止です」。
上海市随一の観光スポット、外灘（バンド）に位置する会議・宴会場
「ザ・グランド・ホールズ」は最近、利用客がテスラ車で来場することを断っている。

地元の住民によると、敷地の通過も認めない。
その理由について従業員は「規則に従ったものだ」というだけで、詳細を明かさない。
上海市政府系企業が運営しており、政府機関がテスラの乗り入れを制限していることに対応したものとみられる。

中国工業情報化省の金壮竜・工業情報化相は26日の日本の経済団体との会合で、
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者（CEO）との23年の会談について触れ、
「テスラ車は国家機関の一部への乗り入れを禁止されている」と明らかにした。

中国版のX（旧ツイッター）と呼ばれる微博（ウェイボ）によると、江蘇省や浙江省、湖北省の
複数の地方政府機関で安全保障上の理由からテスラの利用を禁止する通知があった。
四川省の拘置所では施設から50メートル以上離れた場所への駐車を求める通知が出された。

通行規制も広がる。23年夏に四川省成都市で開いた大学生年代の国際競技大会
「世界ユニバーシティー大会」の期間中に、テスラ車の走行が制限されたルートがあった。
重慶の繁華街でも昨年末、一部地域でテスラの走行を禁止する規制があった。

テスラ車が駐車中に周囲の不審な動きを検出して録画したり警報システムを作動したりする機能を、
中国政府が警戒しているとの見方もある。中国メディアは昨年8月、湖南省の地方空港が
同機能で情報漏洩の懸念があるとの理由でテスラ車の乗り入れを禁止したなどと報じた。

テスラはこの問題を受けて微博への投稿で、車両などから得られたデータを保管するための
データセンターは中国大陸内に設置済みだと説明した。
データ管理が現地で完結しており、外部に流出する懸念はないと強調した。

テスラは中国大陸での乗り入れ規制に関する日本経済新聞の問い合わせに回答しなかった。

テスラは19年末に米国外で初めての完成車工場を上海市で稼働させた。
いち早く全額出資での工場稼働が認められるなど中国政府との蜜月ぶりを示し、中国市場で成長してきた。
中国国内だけでなく、海外向けの輸出拠点の役割も担う。

中国メディアによると、テスラの23年の中国販売台数は前年比37%増の60万台で、
中国市場におけるシェアは8%だった。
一方、中国電気自動車（EV）最大手の比亜迪（BYD）は50%増の270万台でテスラを引き離す。

米中対立が続くなか、中国では政府の後押しを受けて、中国ブランドを購入する動きが加速している。
テスラと同様に政府と蜜月とみられてきた米アップルも、政府職員が公用での利用を控える動きが広がる。
有力外資ブランドは厳しい戦いを迫られそうだ。

（北京=多部田俊輔、台北=鄭?方）

日経新聞　http://www.nikkei.com