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★派閥は看板を替えれば存続容認…岸田首相の「決意」と自民党が35年前に掲げた「大綱」の埋まらない溝

2024年1月26日 06時00分

　自民党は25日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治改革の中間取りまとめを正式決定した。
派閥の全廃は求めずに、「政策集団」に看板をかけ替えての存続を認める内容で、
35年前に「派閥解消」への決意を示した党の「政治改革大綱」よりも後退した。
総裁や幹事長などの党幹部や閣僚に在任中は派閥を離脱するとの記載もない。踏み込み不足ではないのか。（我那覇圭）

◆政治刷新本部の「成果」を強調

　「政治は国民のものという立党の精神に立ち戻るためには、自民党自身が変わらなければならない」
　中間取りまとめの原案を練った政治刷新本部の初会合から2週間。
岸田文雄首相（党総裁）は25日の臨時総務会で、政治改革への「強い決意と覚悟」を強調した。
　だが、刷新本部会合で議論の中心となったのは「派閥の存廃」。
無派閥の議員が派閥全廃を訴える一方、問題点の検証もないまま派閥解散に踏み込むのは暴論だとする意見も出て対立。
首相は18日、意見を集約することもなく、唐突に「岸田派解散」を打ち出した。

◆政治団体の届け出廃止に踏み込まず

　中間取りまとめを読むと、派閥については「『お金や人事のための集団』とみられても
致し方ない状況が継続してきた」と認め、派閥による政治資金パーティー禁止、派閥による人事推薦の廃止を盛り込んだ。

　それでも、事件の温床となった派閥については、解散を求めることはしなかった。
安倍、岸田、二階、森山の4派閥は解散を決めたが、残る麻生、茂木の2派閥は存続する方向となったのは、このためだ。
既存の派閥に政治資金規正法上の「政治団体」としての届け出を廃止することも求めていない。

※図表　政治改革大綱と中間取りまとめ「派閥」見直しの主な違い
●政治改革大綱（1989年5月23日）
○中間取りまとめ（2024年1月25日）
●派閥解消を決意
○「派閥」から脱却し本来の政策集団に生まれ変わる
●総裁・副総裁・幹事長・総務会長・政務調査会長・参院議員会長・閣僚の在任中の派閥離脱
○記載なし
●派閥実務者間で党機関にかわる意思決定と誤解されることはしない
○政策集団が人事に影響を及ぼしていると見られる働きかけ、協議はしない
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　中間取りまとめには、政治資金規正法に違反した場合に議員に連帯責任を負わせる連座制の記載もない。
連立政権を組む公明党の北側一雄副代表は25日の記者会見で「（自民は）規正法をどうしていくか具体論にまだ踏み込んでいない。
会計責任者だけでなく、議員本人がどう法的な責任を持つかが国民の関心事だ」と指摘した。

　連座制が記載されていないことを巡っては、立憲民主党の長妻昭政調会長も記者会見で、
「（政治資金規正法に違反した場合は）党内で処分することには触れているが、
法的に会計責任者と同党の責任を負わせるとは書いておらず、話にならない」と批判。
中間取りまとめそのものについて「既にやっていて当然のことばかりが並んでいる」と酷評した。

◆「党をどう守るかの観点での議論ばかり」

　神奈川大の大川千寿教授（現代日本政治）は「中間とりまとめでも、派閥ではなく党幹部らが開く
政治資金パーティーは禁じられておらず、人事の派閥推薦も目に見えない形で行われる可能性は残されている」と指摘。
「自民はたびたび派閥の解消を唱えながら、派閥の連合体として成り立ってきている。
政治資金規正法などの改正に加えて、中長期的には政治資金を厳密に監督する第三者機関を設けるなど、
外部の力も使いながら派閥の統制を強めることも検討すべきだ」と語った。

　中央大の三船毅教授（政治過程論）も自民党のこれまでの取り組みを巡り、
「国民は何が起きたのかまだ分かっていない。（政治資金収支報告書に記載されなかった）
お金がどうつくられ、何に使われたのか明確にせずに『次の話題に移りましょう』と言われても納得できない」と強調。
「党をどう守るかという観点での議論ばかり。政治刷新とは程遠い」と切り捨てた。

東京新聞　http://www.tokyo-np.co.jp