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★イスラエル首相、ガザ地上侵攻での「ハマス壊滅」にこだわる理由

　パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘で、
イスラエルのネタニヤフ首相が28日、戦いが「第2段階に入った」と述べた。
今後、イスラエルの戦略はどう変わるのか。

●地上侵攻を遅らせた二つの懸念

　イスラエル軍は当初、早期にパレスチナ自治区ガザ地区に地上侵攻し、ハマスを壊滅させる構想だった。
ただ大きな懸念が二つ持ち上がった。

※地図　　地上攻撃をするイスラエル軍の動きと避難勧告エリア
http://cdn.mainichi.jp

　一つは地上侵攻で多数のガザ市民が犠牲となり、国際的な非難を浴びることだ。
ガザは人口約220万人が地中海沿いの狭い地域に集中している。
ハマスはイスラエル軍の攻撃を避けるため、住宅密集地の地下にトンネルを張り巡らせ、軍事拠点として使う。
本格的な戦闘になれば、市民のさらなる被害は避けられず、国際法違反との批判を受ける可能性が高い。

　そのためイスラエルは国際社会、とりわけ米国の理解を得ることに腐心した。
ネタニヤフ首相は各国の首脳らにハマスによる残虐な*害現場の写真を示して感情に訴えた。
さらにガザ市民の被害を抑える目的で、実効性は不明なものの、ガザ北部の住民に事前避難を呼び掛けたり、
人道支援物資の一部搬入を認めたりした。ただガザの窮状は連日、メディアを通じて世界に伝わっている。
アラブ諸国を中心に世界各地で反イスラエルのデモが起きるなど、理解を得たとは言えない状況だ。

　もう一つの懸念はハマスによってガザ地区に拉致された、少なくとも230人に上る人質の安全だ。
被害者の家族らは地上侵攻よりも人質の解放を優先するよう求めており、
イスラエル軍の本部前で連日デモを行うなどしている。
人質のうち外国籍を持つ人は138人おり、安全確保が国際問題にも発展している。
ハマスは人質の解放を、ガザへの物資搬入や停戦などの交渉材料に使い始めた。

●市民の怒り沸騰　板挟みに

　一方、イスラエル市民のハマスに対する怒りは激しい。
ハマスの攻撃によるイスラエル側の*者は約1400人で、ほとんどが攻撃初日の7日に集中している。
これまでイスラエル軍とパレスチナ武装組織の戦いで最も被害が大きかったのは2000〜05年の
第2次インティファーダ（民衆蜂起）だったが、それでも*者は約5年間で約1100人にとどまっており、
今回は「史上最悪」とも言える被害だった。

　さらにハマスは、子供や女性など性別や年齢を問わずに民間人を*害し、一部を拉致した。
ハマス関連のネット交流サービス（SNS）では、残虐な*害現場や拉致を祝福する
ハマス支持者の動画が拡散され、市民の怒りは頂点に達した。
軍に厳しい報復を求める声は国民の間で日に日に高まっている。

　ネタニヤフ氏は沸騰する世論と、人道的配慮の間で板挟みになっていた。
イスラエル軍は空爆でハマスの関連施設を破壊してきたが、ハマス幹部がいる軍事拠点は
ガザの地下に張り巡らされたトンネル内にあり、地上戦を始める決断も迫られていた。
結局、対ハマスのための地上戦を徐々に拡大しつつ、国際社会の批判もある程度かわしながら、
人質交渉も続けるという「妥協策」を選んだ。

●自らの失敗を隠す狙いも?

　ネタニヤフ氏が地上攻撃にこだわる理由は他にもある。
国内では、今回の攻撃を招いた責任は「ネタニヤフ氏にある」との批判が根強く、それをかわすためだ。

　計15年以上にわたって政権を担うネタニヤフ氏は、パレスチナの独立に消極的なことで知られる。
07年にハマスがガザを実効支配し、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府と分裂した後、
ネタニヤフ氏はその状態を「維持する」ことに執心してきた。
パレスチナが分裂していれば、イスラエルがパレスチナとの和平交渉を実施しない口実になるためだった。
（続く）

毎日新聞 2023/10/29 20:23（最終更新 10/29 23:24） http://mainichi.jp

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